メタル・バス恒温槽




  1. 白金薄膜温度センサによる温度制御回路:


  温度センサには、熱電対ではなく、もっと出力の大きい(=ノイズに強い) 白金薄膜温度センサ(SDT101BXN100DF、ただし 〜300℃まで)を用いて、SSR(ソリッドステート・リレー)による単純なON−OFF制御 + 位相制御による20Aトライアック・コントローラー(秋月電子のキット)を作成した。 (*本当はPID制御の方が良いが、後述のように、10分周期の±5℃程度に抑えられたので、とりあえず良しとした。)

   センサの特性: 0℃: 100Ω、 100℃: 135.0Ω、 200℃: 168.8Ω、 300℃: 201.3Ω (白金センサのリード線は、硼砂をつけてバーナーの火に入れて一瞬 白熱にして、溶接する。 この際、センサに伝熱しないようラジペンで挟む)   すなわち、電流が一定ならば、電圧が増加する原理。

  センサへの電流印加は、常温付近の温度特性が安定している、定電流ダイオードE−301(0.3mA) を並列に2本入れた。 (定電流ダイオードは、本来、5−10V程度で、複数の直列のLED点灯用に作られている)
  測定温度は、VSS−Vdd(=0−5V)の1024分割値を、2で割って、形式上、0−511℃まで表示できるようにした。(実際はセンサの定格により、300℃が限界)

  温度設定は、0〜255℃ までを、8pのDIP−SWで行ない、測定温度が 設定温度よりも低いときに リレーがONとなり、高いときは OFFになるようにプログラムを組んだ。
  温度上昇の加減は、20AトライアックコントローラーのVRで調節する。
  モニターのLCDには、上段に設定温度、下段に測定温度を表示し、リレーONのときは、LEDを点灯する。

  
    

 

           *  PIC プログラム




  2. 恒温槽(電熱炉)の作成:


  (1) 電熱炉部分の作成:

  電熱炉は、600Wニクロム線を円柱状の容器に巻いて、耐熱セメントで固めて作成した。(100Vで、最大6A(AC))

   円柱状のステンレスコップ(φ65×h95mm、モノタロウ)に 絶縁材としてアルミナシートを巻いて(アロンで固定)、まず1mのシリコンゴムチューブをらせん状に巻き付ける。(テープで固定) 次に、1mに引き伸ばした ソレノイド状600Wニクロム線を φ6エクシルチューブ(1m)に通したものを、ゴムチューブの隙間に巻き付け、耐熱セメントを塗って仮固定する。 ある程度乾いたら ゴムチューブを外して、さらに耐熱セメントを塗って仕上げて、数日乾かす。

  ・ てんぷら用の油缶に上下に穴をあけ、碍子(がいし)菅セットを付けた端子ねじを通す。 底にアルミナマットを敷き、上記の炉心管を入れてねじで固定し、隙間に 断熱用のアルミナ繊維を詰めて完成。

  ・ 米秤量用のステンレスカップ(ダイソー)が、ちょうどこのステンレスコップにサイズが合うので、これに合金を入れる。

 


  (2) 鉛−ビスマス合金の調整:

  鉛(Pb) − ビスマス(Bi)系 低融点合金は、液体状態の温度範囲が広く、鉄系金属をほとんど腐食しない、酸化しにくい合金なので、近年、原子炉の冷却用に用いられている。
  Pb 44.5 : Bi 55.5 (Wt%) のとき、m.p.125℃ (b.p.1670℃)になる。 重量は結構あり、鉛470g + ビスマス586gで、1kg以上もある。 (こぼさないよう注意されたし)
  鉛、ビスマスの単独の融点は高いので、最初の溶解時はバーナーで行う。

 


  (3) 電熱炉の試運転:

  ディップスイッチを目標温度に設定して、最初は位相制御のVRを回して最大の6Aに設定して効率よく温度を上げ、目標温度の50−100℃下くらいになった時、4A程度に落とす。

   ステンレスカップにを入れて、80℃に設定した場合は、0−100℃の赤液温度計で較正し、LM35DZ記録温度計(41.3)で温度変動の記録を取ったところ、6Aで沸騰温度まで行き、4Aにしてからは、大体 ±3℃、周期10分 程度に振れる。

   メタルバスも同様に、255℃(最高温度、8p・DIP−SWすべてON)に設定すると、最初は280℃以上にも上がってから、 ON時 4Aの定常状態で、254℃をセンターに、±5℃、周期10分 程度に収まった。 5Aにすると、センターが3℃高めになり、振れ幅は同じ。

  較正用の温度計は、基本的に、(今までほとんど使ったことがない、秘蔵の?)水銀温度計(0−400℃)で行ない、補助的に、市販のペン型温度計(0−300℃、モノタロウ)で行なった。 (ペン型の方は水銀よりも 数度高めに出る。また、ペン型は、300℃よりも少しでも高くなると壊れるので、要注意。)

   測定温度表示が狂った場合は、常温で零調のRを、高温で RG (計装アンプのゲイン)を調整する。

  


   (追記 22’11/22

  
 定電流ダイオードを、E−101 ×6 から、温度特性が平たんな E−301(0.3mA) ×2 に変更します。 とりあえず これで、測定温度の変動はかなり収まった。 (↑ 回路図変更済み) リード型: E−〇〇〇
     





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